フェデ・アルバレス『ドント・ブリーズ』(Don't Breathe、2016)

盗みを繰り返しているデトロイトの若者三人組が、これが最後と盲目の独居老人の家に侵入する。老人はイラクで失明して退役した元軍人、娘を交通事故で失って賠償金を得たので金はあるはず。盲人だって聖人じゃないし!

紅一点のロッキーは小さい頃に父が家を出て行き、母から虐待を受けてきた。しかし地獄の沙汰も金次第、なんとかして金さえ手に入れれば、幼い妹を連れて故郷を離れられる。Rockyという中性的な名前からしてファイナル・ガールの資格十分だが、Roxanne の愛称だろうか。

危険な人間の住む家に足を踏み入れてしまうタイプのホラーは、何らかの事情で逃げられなくなるように設定されるのが普通だろうが、これは逆。何度も引き返す機会があったのに、すべて金目当てでふいにする。故郷から逃げ出したいはずなのに、何度も何度も逃げる機会を逸し続けて行き詰まるメタファーのようでもある。

老人が猛犬を飼っている(盲導犬ではない)ことは序盤で示される。車の窓に吠えついてガラスを涎で白く汚す、異様な描写が暗示するものが終盤で明かされて生理的嫌悪感を与える。

(ネタバレになるが、「子供の命を子供で償う」というのは中国映画によくあるパターンのような気がする。それで夫が起こした事故を妻が贖うという映画を見た記憶があるのに、タイトルが出て来ない)