チェ・ジンソン『サイバー地獄 n番部屋 ネット犯罪を暴く』(2022)

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Netflixドキュメンタリー。テレグラムを利用した有料チャットルームで、多くの未成年者を含む女性を脅迫して性的虐待を加えた映像を配信していたあの事件。

ハンギョレ新聞の記者と、彼らに先駆けて匿名で取材記事を公表していた二名の大学生(当時)、SBSのテレビ番組で取り上げた放送作家とプロデューサーが取材から報道までの経験を語る。

ハンギョレの記者は、記事が出てすぐに、家族を含む個人情報を公開される被害を受けた。SBSは番組を放送したら社屋から被害者を投身自殺させるとの脅迫を受ける。幸い、その被害者は身元が特定され、放送日には警察が保護することができた。

写真などは画像処理が施されているが、実際に流出したものではなく、被害者のプライバシーに配慮してドキュメンタリー用に制作したものだとのテロップが最初に入っている。TwitterなどのDMからリンクを踏ませて情報を抜いたり、求人詐欺で個人情報を収集して脅迫する手口は詳細に説明されるが、被害者が命令された内容への言及は最小限に止められ、抽象的なアニメーションが使用されている。猟奇的な興味や性的好奇心で消費されないよう慎重に作られており、被害者のイメージ映像も若干の使用に抑えられている。

こうした事情もあってか、ジャーナリストを中心にした構成になってはいるが、誰より勇気を要したのは、メディアに情報を提供したり、警察に被害を証言したりした匿名の被害者の方々だろう。(誰にも語らずに耐えた方々にも、自分を守る決断をした勇気に敬意を表したい)

犯人の使用していたアプリを示す捜査関係者の言葉に、女性のセクシュアリティへの言及が含まれていた。そのアプリで被害者を物色していたとすると、アウティングをほのめかして脅迫したケースもあったのではないか。マイノリティの若年女性を標的に選んでいたとすると卑劣の上にも卑劣だ。