レガス・バヌテジャ『フォトコピー』(Penyalin Cahaya、2021)

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主人公は厳しい父の管理下にある大学生。ウェブサイト管理を担当している大学の劇団が授賞、そのパーティーで泥酔した姿がSNSに流出し、奨学金の受給資格を失う。しかし写真だけではなく、意識を取り戻した際に着ていたシャツの前後が逆になっていたことに不審を抱き、彼女は記憶をなくした時間に何があったのかを突き止めようと関係者の携帯のハッキングに手を染める。

誰もが常に携帯を持ち歩きネットにつながっている日常は、常にデータ流出と盗撮の危険と隣り合わせでもある。その上、被害者が訴え出てもプライバシーは秘匿されず、逆に名誉毀損の汚名をきせられて謝罪させられる始末。

主人公スリヤニ(Shenina Cinnamon)は、強権的な父の下で目立たないようにふるまっている印象の冒頭と、家を追い出された後の行動の大胆さがコントラストをなす。この父がまた、食道の切り盛りは妻に任せて、娘には早く帰ってきて手伝えなどという一方、自分は座って携帯をいじっているばかり。権力者にはへつらい、家長の権威だけは維持したいといういじましさはやや単純化しすぎの嫌いがある。

視聴年齢は16歳からとあるが、性暴力シーンが逆に性的消費されることを懸念してか、犯行の場面はほとんど映らず、背部の写真以外に被害の細部が再現されることもない。

デジタル的な複製や拡散、販売や真相に迫る手段としてハッキングが用いられたりするが、最終的に主人公たちが選ぶのは、紙に印刷して残った証拠と手書きの日記をコピーしてばらまくこと。加害者側がいくらデジタル的に証拠の隠滅を図っても、被害者が訴える言葉は消せないのであった。