大阪アジアン映画祭、12本目はシネ・ヌーヴォにて特集企画「日本映画人のニュー・フロンティア」の一本、『はなればなれに』(公式サイト)。昨年の東京国際映画祭で上映されたバージョンから新しく編集し直したとのことで、85分版での上映。今秋の劇場公開が予定されているそうだ。
もともとこの時間は見るつもりではなかったが、1シーン1シーンがよく計算された感じの知的な作品で、昼食を抜いて観たかいはあった。そこここにさりげなくくすぐりが入っているのも、控えめな演出で品が良い。
タイトルから想像されるように、主要人物は男二人・女一人という構成。ゴダール映画をよく観ている人ならオマージュに気づく場面が幾つもあるのかもしれない。私は元ネタを知らないのでそのあたりの感想は特にないものの、*1 後半で Wii でテニスゲームをしていた二人がそのまま画面の外に向かってサーブし…というアントニオーニの引用が出てきた時は、「えっ、これをそのままやっていいの!?」と驚いた。
パン屋のレジ係(しかし店主の横暴に切れて店を飛び出す)のクロ、彼女を路上でスカウトして新作の舞台に出演させようとする演出家、二人をたまたま車に乗せてやった写真家の三人が、海辺の(元)旅館で共同生活をする話。だが、あらすじを書いてみて、そんな話だったっけ?と思ってしまうのは、各シーンが魅力的でそれぞれの印象が強い分、全体像が残りにくいからかもしれない。
クロ役の城戸愛莉は、サラリーマンやバンドマン達からあざやかに金をちょろまかす場面など、前半で街を回遊する時のコケティッシュだがちっともかわいくない(これは褒め言葉)雰囲気が印象的だ。ただ、何を考えているのかわからないつかみどころのなさが、旅館に行ってから少しずつ薄くなるような気がする。終盤のベッドの場面では、この子がそんなにわかりやすい行動を取るのだろうかと不思議な感じを受けた。
ところで、写真家役の中泉英雄は陸川『南京!南京!』で内省的な日本兵を演じた俳優だ。印象的な役だったけれど、同一人物だということに見ている間は全く気がつかなかった!
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英題:KURO
製作年:2012
制作国:日本
時間:85分
言語:日本語
プロデューサー:大日方教史
監督:下手大輔
脚本:下手大輔
出演:城戸愛莉、斉藤悠、中泉英雄、松本若菜、NorA、我妻三輪子、梶原ひかり
録音:與語哲士
撮影:灰原隆裕
編集:長江悠介