Emir Ezwan『Roh』(2019)

https://www.netflix.com/id-en/title/81452171

Netflixで観られるマレーシア・ホラー。人里離れた森に暮らす母子。姉弟は森をさまよう少女に遭遇し、母に話して家に招き入れ、食事を与える。何も語ろうとしない少女は翌朝、戸口で鶏を殺して内臓を貪り、「満月の夜に皆死ぬ」と告げて喉をかき切る。

母は森に少女の亡骸を安置し、姉弟に口止めするが、それから次々に奇妙なことが起こる。永遠に森で獲物を追いかける pemburu hantu という幽霊について母が序盤に語るが、森から現れたのはさらに恐ろしいものであった。

登場人物六人というミニマルな映画。少女の行方を尋ね歩く、片眼の濁った男を演じるのは、よく呪術師役を務めるナムロン(Namron)。彼の正体が謎となり物語を牽引する。夜中にバラバラッと小屋に石つぶてが飛んできたり、遠野物語に出て来るような怪異も出現。

時代背景は説明されないが、イスラーム色は薄く(冒頭にクルアーンの引用があるのみ)、森のさまざまな hantu が人間と共存している。憑かれた者や、憑かれた人間を殺そうとする者による取り返しのつかない過ちは、歴史的事件の寓意とも解せそうだが、不明のままにされている。