キム・ジンウォン『ワーニング その映画を観るな』(암전、2019)

 霊が映った映像はよくあるが、霊が撮らせた映画というのは初めて聞いた。なかなかその曰く付きの映画が出て来ないので、「牛の首」のような話かと思いながら観ていたところ、ファウンド・フッテージそれ自体より恐ろしい事態へと展開する。

 

 

 ホラー映画の脚本執筆に行き詰まる新進監督。彼女はネタを集めるため、後輩から聞いた「観客が心臓麻痺を起こし公開できなくなった」という学生の卒業制作映画を実見できないかと、テジョンの大学に向かう。しかし大学には記録がなく、プチョンの映画祭に出品されたという情報で映画祭事務局の先輩を訪ねるが、出品は中止されていたことが判明。近くには廃墟と化した映画館があり、事故で焼死した女優の霊が出るという噂が伝わっており、そのいわくつきの映画もそこで撮影されたらしい。

 『暗転』というタイトルを頼りに、ネットの掲示板でフィルムの情報を求めたところ、何と監督本人から「すぐに投稿を消せ」という連絡が入り……。
撮影中に女優が事故死して未公開に終わった『暗転』、そしてその曰く付きの劇場で撮影されたもののお蔵入りとなった『暗転』、主人公がそこから着想する『暗転』と、同名の三つのフィルムが層を成す。

 『エクソシスト』に救われてホラー映画で人を救いたいと監督を志した二人が、それぞれ実人生をホラー映画にしてしまうことになる。結末を明かしてしまうと『地獄変』で、霊より人間の業の方が恐ろしいというパターンだった。