ルパート・ウェインライト『ザ・フォッグ』 (The Fog、2005)

 ジョン・カーペンター監督の同名作品(1980)のリメイクホラー。

 アントニオ島という小さな島。港町の建設の功労者として称えられる四人の男を記念した像が作られ、除幕式を迎える日、海上から濃い霧がやってくる。
ちょうど時を同じくして、町を出ていたエリザベスが帰って来る。夜な夜な燃え上がる帆船と海中に沈む情景を夢に見、故郷にその手がかりがあるのではないかと考えたのだった。

 その夜、ボートハウスを沖に出して遊んでいた男女四人が霧の中で何者かに襲われ、三人は刺殺体となって発見、冷凍庫に隠れて生き延びた一人も何が起こったのか分からない。ただ、霧の中に帆船を見たことは覚えている。

 エリザベスは夢に現れる天秤のマークについて調べ、それがかつて貿易の一大拠点として繁栄した小島に由来することを知る。しかし、島民は外から持ち込まれた感染症によって半数が死亡、残りの半数も島を脱出した船の火災で全滅していた。

 霧の中から人影のようなものが見えるが、なかなかはっきりとした姿は現さない。目に見えない力で吹っ飛ばされて叩きつけられ、燃え上がるばかり。

 幽霊船の正体と、町の建設の功労者たちの関係が最後には明らかになり、エリザベスはアントニオの町が不義の財によって繁栄してきたことを知る。彼女の夢は、財貨を奪い取られて燃え上がる船の中で焼死し、あるいは灼熱地獄から逃げようとして海中に身を投じて命を失った人々の記憶だった。

 復讐者の来訪を告げる手鉤で激しく扉を叩く音に、ゴシック・ホラーの雰囲気があっていい。霧と化して隙間から忍び込む形のない不気味さに対して、どこか荘厳さのある幽霊たちのビジュアルも期待を裏切らない。

ザ・フォッグ

ザ・フォッグ

  • トム・ウェリング
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