アメリカ

ウィリアム・ブレント・ベル『エスター ファースト・キル』(Orphan: First Kill、2022)

2009年の『エスター』の前日譚。先天性の疾患で10歳の少女の姿で成長が止まっているエスター。実際は30代で、第二次性徴も見られるが、子供服を着てしまえば10歳といって通用する。彼女は元の名前をリーナといい、最も危険な患者として精神病院に収容されて…

スコット・パトリック『ウィジャ・シャーク 霊界サメ大戦』(Ouija Shark、2020)

親類のコテージの留守番を任され、夏を過ごしにやって来た若い女たち。中の一人がビーチでウィジャボードを拾い、試しに遊んでみたところから、サメの亡霊を召喚してしまう。 林の中をふわふわ飛んで来る半透明サメに、一人ずつ食われてゆく女たち(と無関係…

ジョン・M・チュウ『クレイジー・リッチ!』(Crazy Rich Asians、2018)

ゲーム理論の大学教授レイチェル(コンスタンス・ウー/呉恬敏)は、シンガポール人の恋人ニック(ヘンリー・ゴールディング)に連れられ、友人の結婚式に出席することに。中国出身の母に女手一つで育てられたアメリカ生まれの彼女は、シンガポール華人の風…

エヴァン・スピリオトポウロス『アンホーリー 忌まわしき聖地』(The Unholy、2021)

1845年、マサチューセッツのバニフィールドという町。のっけから処刑される魔女の視点で始まる。目の部分だけ開いた何かを顔に被せられ、吊り下げられて火を放たれる。魔女の魂は小さな陶器の人形に封じられる。これはkern baby と呼ばれるお守りの人形で、…

ジョン・タートルトーブ『MEG ザ・モンスター』(The Meg、2018)

米中合作のサメ映画。上海沖の観測基地で、海底と思われていた層のさらに下に未知の領域があるとの予測から、有人探査機が潜水する。そこには確かに空間が広がっており、生命体の存在すら確認されたものの、それは巨大イカと、絶滅した古代のサメ・メガロド…

ウィリアム・フリードキン『エクソシスト』(The Exorcist、1973)

カトリックの悪魔祓いの話だが、アザーンと共に太陽の色が変わってゆく印象的なオープニングだ。誤ってほかの映画を再生してしまったのかと思ったが、高齢の神父はイラク北部の遺跡で発掘調査に参加しているという設定だった。彼は帰国前、悪霊の頭部を象っ…

デヴィッド・R・エリス『デッドコースター』(Final Destination 2、2003)

『ファイナル・デスティネーション』シリーズ第二作。第一作での飛行機事故からちょうど一年後。ハイウェイでの玉突き事故を幻視した主人公のキンバリーは、ハイウェイに入る車列を妨害する。予兆の通りに大事故が起こるが、一命をとりとめたはずの男女が順…

オーレン・ペリ『パラノーマル・アクティビティ』(Paranormal Activity、2007)

シリーズ2・3を先に観て、数か月空けてようやく1を観た。呪われた姉妹のうち、姉とそのパートナーの話だが、超常現象の撮影のために設置されるカメラは一台だけで、後のシリーズ作品と比べて本当にミニマルな作り。恐怖の演出も最小限にしてあり、シリーズ作…

エミール・エドウィン・スミス『ディープブルー・ライジング』(Ice Sharks、2016)

極地観測所がその凶悪かつ知能の高いサメによって孤立させられ、沈められる脱出パニック。『ディープ・ブルー』シリーズと勘違いして観たが、邦題がややこしいだけで特に関係はなかった。 北極の氷に囲まれて独自に進化を遂げたサメたちが、温暖化によって氷…

タイ・ウェスト『Pearl パール』(Pearl、2022)

『X エックス』シリーズ第二作、老婆パールの若き日を描く。時代背景は『X エックス』の60年前、第一次世界大戦中の1918年で、夫ハワードは出征しており、しかもスペイン風邪の流行中。 happinet-phantom.com 家畜小屋の扉が開いて映画が幕を開けるが、パー…

タイ・ウェスト『X エックス』(X、2022)

3月に読んだホラー映画の女性表象についての批評に、父権的な象徴的秩序をさげすみ転覆する力を持った、近年のホラー映画に表れる「Monstrous feminine」の例として『X エックス』と『Pearl パール』も上がっていた。 theinitium.com ちょうど『Pearl パール…

クリスチャン・アルバート『ケース39』(Case 39、2010)

児童相談所のケースワーカーのエミリー(レニー・ゼルウィガー)は、多忙な毎日の中、充実感と同時に、子供を虐待する親を自分が権力者として裁いているようだとかすかに感じている。 彼女の担当するケース39の対象児童リリーは、実の両親にオーブンで焼かれ…

M・ナイト・シャマラン『ヴィジット』(The Visit、2015)

ブラムハウス製作のホラー。ジャンプスケアや恐怖を与える映像が直接挿入されるのではなく、ごく普通の生活風景がいちばん怖いというパターン。 初めて会う祖父母の家で一週間過ごす予定の姉弟は、セルフドキュメンタリーを制作しようとカメラとノートパソコ…

ピーター&マイケル・スピエリッグ『ジグソウ:ソウ・レガシー』(Jigsaw、2017)

シリーズ第一作を見ただけで、あとの六作はすべて飛ばして〈レガシー〉を見る。とっくに死んだはずのジグソウが復活し、ゲームによる猟奇殺人が開始される。出て来る人間がことごとく怪しく、誰が犯人であっても不思議はないというパターン。 ゲームの中には…

マティス・バン・ヘイニンゲン・Jr.『遊星からの物体X ファーストコンタクト』(The Thing、2011)

51年版・82年版は共に未見で、原題のあまりのシンプルさにびっくり。エイリアンが出て来る映画だろうという程度の前知識だったが、後半はほぼ極地の基地という孤立した舞台での感染症パニックに展開するのだった。エイリアンの解剖を始めるので、絶対人間に…

ドゥニ・ヴィルヌーヴ『DUNE/デューン 砂の惑星』(Dune、2021)

砂漠の砂から「スパイス」と呼ばれる物質を精製可能な宇宙で唯一の惑星アラキス。その統治を命じられたアトレイデス家は、以前にスパイス貿易で巨利を得ていたハルコンネン男爵が企てる陰謀に巻き込まれる。 アトレイデス家の跡取り息子ポール(ティモシー・…

ジェラルド・ジョンストン『M3GAN』(2023)

ジェームズ・ワンとジェイソン・ブラムの製作、『マリグナント』のアケラ・クーパーの脚本という人形ホラー。 玩具メーカーで開発に従事する独身女性ジェマ(Tinderを使っているところからすると交際相手も今はいない様子)は、両親を失った姪のケイディを引…

イアン・チーニー、シャロン・シャタック『科学者とジェンダー』(Picture a Scientist、2020)

米国の女性科学者が受けてきたジェンダーハラスメントの構造を描くドキュメンタリー。研究成果が奪われるとか性被害を受けるといったような、誰が見ても明らかなハラスメントから一歩進み、もっと無意識の部分での性役割に対する固定観念へと迫ってゆく。 ww…

ダリン・スコット『ディープ・ブルー2』(Deep Blue Sea 2、2018)

1999年の第一作からずいぶん間を空けての続編。サメ映画履修4作目。シンギュラリティを前に人類がコンピュータにうち勝つため、知能をブーストする薬を開発しようと試みるマッドサイエンティスト。 zacco-q.hatenablog.com 極秘実験を繰り返し、高い知性と人…

ジャウム・コレット=セラ『ロスト・バケーション』(The Shallows、2016)

『ジョーズ』『ディープ・ブルー』に続きサメ映画の履修は三作目。亡き母が妊娠中に訪れたというメキシコのビーチを一人で訪ねたアメリカ人医学生。サーフィン中にサメに襲われ、干潮時のみ顔を出す岩場に取り残されるという設定。 ファウンド・フッテージの…

レニー・ハーリン『ディープ・ブルー』 (Deep Blue Sea、1999)

『ジョーズ』に続きサメ映画。船で男たちがサメと戦うのかと思ったら、マッドサイエンティストによって養殖されたサメたちに、研究所が襲われる脱出パニックだった。 クローン羊のドリーがニュースになったのが97年、生命倫理にかかわる現実的な課題が新聞を…

楊雨『1989的女孩』(Children of 1989、2018)

www.youtube.com 天安門事件に参与した民主活動家の娘たち三人に光を当て、米国での生活を取材したドキュメンタリー。2018年の撮影当時、当事者は米国で高校・大学に通っている。生まれたのはみな事件後で、中国で成長したが、父が監視下にあり拘束を繰り返…

スティーヴン・スピルバーグ『ジョーズ』(Jaws、1975)

サメ映画はやはりここからだろうと履修にかかる。スピルバーグ作品も初めてのような。巨大ホオジロザメとの格闘より、サメによる死者が出ているのに、観光収入のために海水浴場の閉鎖が許可されないという危機管理の甘さが恐怖。 サメ退治の大半は、変人の船…

アン・リー『いつか晴れた日に』(Sense and Sensibility、1995)

エマ・トンプソンの主演・脚本。李安の監督は四作目、95年の時点でジェイン・オースティン原作を台湾人監督に撮らせようという企画というのは、もしかしてすごいことだったのではないだろうか。 どうして蝶々夫人のような邦題になったのかと思っていたが、「…

ジョン・R・レオネッティ『ザ・サイレンス 闇のハンター』(The Silence、2019)

www.netflix.com アパラチア山脈の地底から発見され、たちまち大群となって地上に適応した生物。大きめの無毛のコウモリのような彼らは、視覚を持たず音に反応して標的を襲う肉食動物。人類は無音の生活を余儀なくされる。 中途失聴の少女と、手話で話す聴者…

ジョン・ラフィア『チャイルド・プレイ2』(Child's Play 2、1990)

人形ホラーはやはりここから抑えるべきか、とNetflixに上がっていたシリーズ第2作から。しかし人形ではなく、むしろ作業機械の恐怖映画だった。 完全オートメーション化した無人の工場で次々に生産される人形に対し、主人公の里親は家でミシンをかける。1990…

ジョナサン・リーベスマン『黒の怨』(Darkness Falls、2003)

抜けた乳歯を金貨に換えてくれるトゥース・フェアリーの怪談。とはいっても魔女狩りものと同じパターンで、はるか昔に死んだ無実の女性の怨念が子供たちを脅かす。 アメリカ映画では小さい子も一人で暗い部屋に寝なければいけなくてかわいそう……とかねて思っ…

ジョン・クラシンスキー『クワイエット・プレイス』(A Quiet Place、2018)

視覚は持たないが鋭敏な聴覚で動くものを襲う怪物に占領された世界。人工内耳を装用する少女とその家族は、手話をはじめ音声言語を介さないコミュニケーションでサバイバルする。『TITANE チタン』に続いて人工補綴物が描かれる映画を観た。 人工内耳のプロ…

ニコラス・ペッシェ『ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷』(The Grudge、2020)

『呪怨』のハリウッド・シリーズ作品。『パラノーマル・アクティビティ』は米国から日本に呪いを持ち帰るが、こちらは日本から米国に呪いを持ち帰る話。 黒人と白人、アジア系と白人という世代の異なる二組の夫婦が登場。金婚式目前の夫婦や、出生前診断の結…

デヴィッド・フィンチャー『ゾディアック』(Zodiac、2007)

60年代末からの実際の未解決連続殺人事件を題材にした映画。犯行シーンは序盤に集中、途中からは新聞社に送り付けられた暗号付きの手紙と、犯人を追う刑事と風刺漫画家(のちにこの事件について本を執筆)の話に。 名前はよく耳にするものの見たことのない『…