Tom Dick and Harry

我的天 タテの巻

我的天 タテの巻

 
我的天 ヨコの巻

我的天 ヨコの巻

 

 香港のCo-Mix作家、クレイグ・オウ・イェン(歐陽應霽/Craig Au Yeung)(公式サイト)の日本版コミックス『タテの巻』『我的天 ヨコの巻』(いずれも産業編集センター、2002年)を読む。左頁に手書きの中文、英文で漫画の添え書きが、右頁に4コマ漫画と日本語訳が配された設計。文体は広東語ではなくて書きことばの中国語だが、日本語・英語と対訳の形になっているのが面白い。
 ヨコの巻の「不眠」の中にこんな表現が出て来た。

They deecide to live together from now on.
So they determine not to go to sleep hence.
Because he nkows he would dream of other girls as soon as he falls asleep.
Because she knows she would dream of Tom, Dick and Harry as soon as she falls asleep

 トムとディックとハリーって、そんなに恋人がたくさんいるのか、と思ったが、中文の方はこうなっている。

因為她知道她一睡了就只會夢到蘋果批和牛腩飯

 アップルパイと牛バラ飯?
 辞書を引いてみると"Tom, Dick and Harry"というのは特定の人物を指すのではなく、中国語でいう「張三李四」のような、どこにでもいる普通の人のことであるそうだ。 阿貓阿狗とかみいちゃんはあちゃんの類だろうか。香港にこの名前のレストランやフードチェーンでもあるのかと検索してみたけれど、クアラルンプールの和食レストランしか引っかかってこない。とすると、中文の「蘋果批和牛腩飯」というのも食べ物ではなく、そういうあだ名の人のことを指しているのだろうか。香港映画では食べ物の名前で呼ばれる人物に時々お目にかかる(先日観た『狂舞派』も主人公は「豆腐花」で、ダンスサークルの先輩は「奶茶」と呼ばれていた)ところからすると、よくあるあだ名なのかもしれない。
 ついでに検索していて見つけたのは、「香港では記入例によく陳大文という名前が用いられる」という情報。西西の短編小説に「陳大文搬家」があるが、陳大文というのは誰でも入れ替え可能な、個別の意味を持たない名前であるらしい。