パン・ホーチョン『低俗喜劇』


 大阪アジアン映画祭、3本目も梅田・ブルク7で『低俗喜劇』。
 チャップマン・トー演じる映画プロデューサーが、依頼を受けて大学で講義を行う。一本の映画を撮るのに、企画から資金集め、キャスティングといった課程でプロデューサーはどれだけ辛酸を嘗めるかという涙なしには観られない話だが、なぜか彼の受ける苦難は間が抜けている。
 離婚した妻に資金援助を求めるとか、子守をしに来てくれた女優と前妻が鉢合わせするとか、黒社会の大物に資金協力を求めに行って口に合わない料理を無理やり食わされるとか、いくつかのエピソードは関係者の実話のようにも思われる。よく広東人というと「四つ足のものなら机以外は食べる」などと悪食のレッテルを貼られるが、この映画では大陸の資金を求めて広西に行ったところ、そこで“牛歓喜”だの怪しげな食材の数々を供されて往生するという場面がある。香港人もあの手の食材には抵抗があるのか、と変なところで感心してしまった。しかしどの料理もおいしそうだったので、広西に行けばありつけるのならぜひ行ってみたいものである。
 スポンサーの意向を受けて、往年のお色気女優、邵音音のヒット作『官人我要』の続編、『官人我又要』を制作することになったものの、六十代の邵音音はヌードシーンを承知しない。そこで首から下は吹き替えを使い、なんとか撮影にこぎつける。相手役は葉山豪だが、彼の登場シーンはたぶん『3D SEX & 禅(3D肉蒲團之極樂寶鑑)』を事前に見ておいた方が楽しめたのでは。
 三級片の制作をめぐる喜劇というから、エロ描写が満載なのかと思ったが、視覚的にはヌードも性描写も一切なし。何が「低俗」なのかと思ったら、台詞が英語のFワードに類する放送禁止用語満載なのだった。中国語字幕はいくらか表現をやわらげていたような気がするが、広東語を母語として理解できる観客にとってはかなり強烈だったのでは。そしてその言いたい放題の舌がたたり、チャップマン・トーは秘書のフィオナ・シッの留守電に吹き込んだ悪口雑言で通報され、ハラスメント調査員(ミリアム・ヨン)の事情聴取を受ける羽目になる。これも誰かのオフィスで起こった実話だろうか。
 ところで、何といっても気の良い女優志望“爆炸糖”役のダダ・チャンがかわいい。ゲストで来阪していたようだが、舞台挨拶は見られず残念。ところでパチパチキャンディーを口に含んでするとイイ、という説の真偽のほどが気になっているのだが、誰かお試しになった方はご一報下さい。

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原題:低俗喜劇
英題:Vulgaria
製作年:2012
制作国:香港
時間:92分
言語:広東語
プロデューサー:彭浩翔(パン・ホーチョン/Ho-Cheung Pang)、梁啟緣(Subi Liang
監督:彭浩翔
脚本:彭浩翔、林超榮(Chiu-Wing Lam)、陸以心(Luk Yee-sum
出演:杜汶澤(チャップマン・トー/Chapman To)、鄭中基(ロナルド・チェン/Ronald Cheng))、陳靜(ダダ・チャン/Dada Chan))、薛凱蒞(フィオナ・シット)、雷宇揚(サイモン・ロイ)、林雪、邵音音、田蕊妮、陳沛妍、楊千嬅、鄒凱光、鄭丹瑞、葉山豪、苗可秀、谷紱昭、袪瑞文、周俊偉、麥玲玲
音楽:黃艾倫(Ngai Lun Wong)、翁瑋盈(Janet Yung
撮影:Jason Kwan
編集:李棟全(Wenders Li