アン・リー『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』

 シネプレックス幕張にて2D字幕版『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(公式サイト)。
 虎と少年が一緒に漂流する話なんて何が面白いんだろうと、最初は全く食指が動かなかったが、やたら評判がいいので気になって観てきた。
 冒頭のCGの動物はずいぶんお金と手間をかけているようで、かなり自然に見えてはいたものの、本物を撮れないなら撮らなければいいのに、と興ざめな思いで見ていた。動物の擬人化の程度は思ったよりひどくはなかったが、それでも多分に人間の思い込みが反映されているのが鼻につく。
 しかしその印象が見終えて一転、これはCGの不自然さが不可欠だったのだと納得した。もっとも、最後に置かれた種明かし的な部分は蛇足のような気も。そこまではっきり説明しなくても、と思ったのだが、原作ではどう処理されているのだろう。
 ところで、西暦何年の出来事か示されたのを見逃してしまったのだけれど、舞台は旧仏植民地のポンディシェリとカナダのモントリオールに設定されている。母親がタミル語を話すシーンがわずかにあったのと、学校でフランス語教育がなされていること、それから船でコックとフランス語を話している場面のほかは、ほとんど英語だった。聞き手であるカナダの作家が英語話者だとすれば、成長したパイ少年が英語で語るのは不思議ではないが、家族との会話もフランス語やタミル語ではなくて英語だったのは、映画的虚構なのか、それとも実際のポンディシェリの言語状況を反映しているのか?

パイの物語(上) (竹書房文庫)

パイの物語(上) (竹書房文庫)

 
パイの物語(下) (竹書房文庫)

パイの物語(下) (竹書房文庫)

 

原題:Life of Pi
製作年:2012
制作国:アメリカ、台湾
時間:127分
言語:英語、フランス語、タミル語
制作総指揮:ディーン・ジョーガリスDean Georgaris
プロデューサー:ギル・ネッター(Gil Netter)、アン・リーAng Lee)、デイヴィッド・ウォマーク(David Womark
監督:李安(アン・リーAng Lee
原作:ヤン・マーテルYann Martel)『パイの物語』
脚本:デビッド・マギー(David Magee
出演:スラージ・シャルマ(Suraj Sharma)、イルファン・カーン(Irrfan Khan)、ジェラール・ドパルデューGérard Depardieu)、レイフ・スポール(Rafe Spall
編集:ティム・スクワイアズ(Tim Squyres
音楽:マイケル・ダナMychael Danna
撮影:クラウディオ・ミランダClaudio Miranda
美術:デヴィッド・グロップマン(David Gropman