ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(Everything Everywhere All at Once、2022)

複数のディスプレイを開いて日々マルチタスクをこなしている新人類の発想の映画だと思った。

最初の10分間でイーッとなって劇場から逃げ出しそうになるのをこらえた。画面に映っている全員の舌を引っこ抜くか、「いっこっつの神様」を勧請したい。

そして、どの平行宇宙に行っても結局自分自身は存在していて、夫と父と娘からも逃げられない。とりあえず父をこの世から抹殺して、自分の存在が抹消されたユニバースを作りたいと思ったが、そういう反出生映画だったら賞レースとは無縁か。

主人公の娘役のステファニー・スー、「許瑋倫」とクレジットされたのでぎょっとしたが、2007年に亡くなった台湾の女優さんとは同姓同名の別人。