丟包

 台湾の〈破報〉を読んでいたら、台湾の観光業者の悪質さを語る文章を発見。しかしどんな観光客に対しても奸計を弄するのではなく、被害甚大なのは“426(=死阿陸)”こと大陸からの中国人観光客である由。

一座阿里山賣茶無限量,直似由茶葉堆積成山,茶價更是攀超玉山頂,旅行社則抽佣3成,分賞遊覽車司機。這回司機指望3萬只得3百,遂而把30個426當鴿子放,這不是一個氣字了得,乃是恨,氣向旅行社,恨向大陸客。

 ツアーバスの運転手は自分の取り分を3万台湾元だと思っていたところ、旅行会社がマージンを取ったために自分の懐には300元しか入らないと知らされ、腹を立てて大陸からの旅行客30人を高速のインターチェンジで下ろして置き去りにした、との事。大陸の観光客のマナーの悪さをあげつらう論調は時々見かけるが、迎え入れる台湾側の旅行業者にもほめられたものではない輩がいるようだ。
 “丟包”というのは台湾教育部の《重編國語辭典修訂本》オンライン版によると“一種騙術。擲一包裹在路上,等別人拾取後,再加以恐嚇勒索。或作「掉包兒」”(一種の詐欺行為。包みを路上に放置し、拾った人を脅してゆする。「掉包兒」にも作る)とある。大東文化大の中国語大辞典では“掉包”((悪いものをいいものと、偽物を本物と)ひそかにすり替える、こっそり取り替える、すり替えをする)に同じとしている。漢語大詞典では、《重編國語辭典修訂本》と同じゆすりの方法を第一に、続けて“小偷或流氓突然抢夺别人的手提包或其它值钱的东西,然后立即逃跑,也叫“丢包””(ひったくり)、“傣族等西南少数民族男女青年常在新年时聚集于矿场或草地上,用荞壳装在枕形的布袋里,互相投抛为戏,谓之“丢包””タイ族など西南の少数民族の若い男女が新年に行う遊戯。広場や野原に集まり、そば殻を詰めた枕の形の袋を投げ合って楽しむ)とある。そば殻の枕というと何やら色消しだが、色とりどりの布を菱形のポシェットのような形に縫い合わせ、紐の部分を持って投げるらしい。お互い気のある男女が投げ合ってカップル成立、ということになるようだ。
 またはIT用語では“掉包”と同じくパケットロスを意味する。
 上の記事の場合、お荷物を放り出す、厄介払いするということになるだろうか。病院が処置に困った病人を連れ出して放置するなどというニュースがあったのを思い出して、“丢包 病人”で検索したところ、インドの病院の記事がいくつも引っかかってきた。

 治療費が払えず、家族とも連絡のつかなくなってしまった患者さんを森に置き去りにした、という胸の痛む記事。他にも死体遺棄など、処分に困る「お荷物」を捨てることを“丢包”と形容するようだ。