ジェームス・リー『 Waiting for Love 』(等愛、2007)

 ジェームス・リー(李添興)監督の映画、『 Waiting for Love 等愛』(2007)(公式サイト)をDVDで鑑賞。

 完全な室内劇で、三組のカップルが登場するオムニバス。いずれも「結婚」という問題をどう処理するかということがテーマになっている。最初のカップル曾茹慧(Amelia Chen)と林建利(Lim Kien Lee)は同棲中で、男は結婚して家と車を買う計画を立てている。しかし女にはその気がなく、ずるずる引き延ばされているらしい。そこに女宛てのラブレターが舞い込み、二人は延々と言い合いを続ける。

 ふた組目はピート・テオ(張子夫)と Bernice Chauly*1カップル。やはり同棲していて、十年あまりの仲。男は泌尿器か何かの病気をしていて、現在無職。女はいずれ結婚するものと思い込んでいたが、実は男にそんな気が無かったことを知る。劇中ではこの二人だけが広東語で、男がふざけて「父の遺言で、広東語を喋る「鬼婆」みたいな女とは結婚するなって」と言う。欧米人のことを「鬼佬」と言うけれど、同じく女性のことは「鬼婆」というようだ。蔑称だが恋人同士の親しみを込めた文脈があるとも取れるが、華人とインド系マレーシア人のカップルの超えられない一線を、冗談めかして伝えているとも取れる。あるいは、結婚という束縛を受けたくない男にとっては、そういう口実なら、女に結婚を諦めさせることができるという含みかもしれない。

 三組目はおなじみエイミー・レン(凌秀媚)と羅木來(Loh Bok Lai)、どうもワケありの二人らしい。「本当に結婚したらどうなるかな?」「きっと離婚する」「だから最初から結婚しない」などと、探り合うような、あるいは自分に言い聞かせるような会話が続く。

 どのカップルも会話が会話になっていないというか、いかにもよくありそうな堂々めぐりのやり取りが淡々と記録されるだけで、見ていてやや疲れる。同じ監督の『私たちがまた恋に落ちる前に』にはちょっとずれた不思議なユーモアがあったけれど、この作品はむしろ普通にありそうな話だ。

 短編「WALL」が併録されているが、これはエイミー・レンのパフォーマンスに羅木來が語りかけるともなく自分の台詞を繰り返すもので、やはり成功しなかったコミュニケーションを題材にしたような作品。ドラマというよりパフォーマンス・アート。エイミー・レンは女優かと思っていたら、もともとはコンテンポラリー・ダンスのアーティストらしい。舞台でも活躍しているとか。恐らく「WALL」というダンス作品(2006年に福岡で行われた「波に乗れ!ダンス波 〜Asia Contemporary Dance Now !」というイベントでも上演されているようだ)がまず有って、その一部を用いて映像作品にしたものではないだろうか。

 

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*1:『グッバイ・ボーイズ』『ゴールと口紅』(未見)の監督バーナード・チョーリーの姉である由。