アンドレ・ウーヴレダル『スケアリーストーリーズ 怖い本』(Scary Stories to Tell in the Dark、2019)

ギレルモ・デル・トロ製作のホラー。1968年のハロウィーンの夜、街の幽霊屋敷に入り込んだ主人公たちは、屋敷に幽閉されていたと伝えられる少女サラの本を持ち帰る。そこには赤インクで綴られた恐ろしい物語が現れ、やがてそれは現実になる。

画面に映るテレビはベトナム戦争の情勢、そして大統領選挙の模様を伝える。人を傷つけも癒しもする「物語」の力が、国家の手にあった時代、主人公は偶然よそからやって来たラティーノの青年と出会い、黒魔術で子供たちを殺していたというサラの秘密に迫る。

こんな本を拾ったら、私なら嬉々として続きを書くに使うに決まっているので、積年の恨みを物語の中でどうやって晴らすか、今夜はできるだけじわじわと恐怖を与えてなぶり殺しにする方法を考えながら楽しく眠りにつこうと思う。

しかし気の利いた苦しめ方を考えるにも想像力が必要で、アルビン・シュワルツの童話集が原作とのこと。かかしのエピソードなど、アメリカ民話が種なのかもしれない。悪い子が報いを受ける教訓的な民話にはぞっとするものがあるから。