サニフ・オレク『サヤン・ディサヤン 愛しき人よ』(Sayang disayang、2013)

https://www.netflix.com/jp/title/80019450

Netflixで日本語字幕付配信のシンガポール映画。シンガポールの豪邸(なんと戸建て!)に暮らす車椅子生活の老人は、アチェから来た若いメイド兼介護士の料理がまずいと聞こえよがしに文句を垂れる。

2004年のスマトラ島沖地震から間もない頃らしく、国外とのやりとりは手紙か電話で、メイドのムルニは携帯電話も持っていない。津波の被害により、彼女の身内で助かったのは甥だけらしい。バンダアチェにいる甥から、壊滅的な被害を受けた地元も復興に向かいつつあるとの連絡が来る。

だんだん分かってくるのだが、ムルニは小さい頃からこの世ならぬ者が見える性質で、亡くなった姉と日々会話しては一緒に歌っている。歌がずいぶん入るが、アチェの民謡なのか、インドネシア人はみな知っているような旋律なのかは不明。

よく分からないのは、ガムランがやたらと流れ、屋敷の庭には一番目立つ位置にプルメリアが植えられ、池に落花が浮かぶカットが繰り返し挿入されること。まるでバリ島のリゾートホテルのイメージ映像のようだが、プルメリアの花は死者が共にあることを暗示しているのかもしれない。

『Spilt Gravy on Rice』の Rahim Razali がまたしても頑固爺さんの役。亡き妻の面影を忘れかねるのはともかく、なぜメイドに家事労働と介護労働以上の感情を期待する? と思うが、需要と供給が映画の中では一致したようなので、構わないのかもしれない。

だが、私の見るところ、いずれきっと遺産相続をめぐって、オーストラリア在住の息子と相当揉めると思う。


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