ナムロン『それぞれの正義』(2018)

原題"One Two Jaga"。

マレーシアで働くインドネシア女性が、契約違反の劣悪な労働に耐えかね、建設作業場で働く兄の元に逃げ込む。兄の雇用者は面倒見のよい人で通っているものの、就労許可のないロヒンギャ難民を働かせ、警察に袖の下を渡して目こぼししてもらっている。

警察は警察で、下っ端の警察官は小商店主に賄賂を要求し、上司は「ダトゥ」と呼ばれるような権力者と結託して金を吸い取る体たらく。新人警察官はそれを見過ごせず、忠実に任務を遂行しようとするあまり暴走する。

インドネシア移民はマレーシアの身分証が取りやすい、と中国語では囁かれたりもするが、この映画では取得まで何年も子供を学校にも通わせられない苦境が描かれる。しかしすべては金とコネ次第という後味の悪さ。

帰る国のある者はそれでもまだましで、就労資格を持たないロヒンギャ難民となると、マレーシアで客死しても、葬式はおろか家族に知らせることすらなされない。郊外に運ばれた遺体は隠密裏に焼かれ、遺灰すらそのままに放置される。

この汚職まみれのシナリオでよくマレーシアの審査に通ったものだと思ったが、Netflixで日本から観られるバージョンと国内公開版は同じなのだろうか?