アジアンドキュメンタリーズで配信、原題は"Walking Under Water"、ポーランド制作のドキュメンタリー。
ボルネオ東岸からフィリピンのスールー諸島にかけて暮らすバジャウ(サマ)人の海の暮らし。撮影地はインドネシア領内とのこと。
小船で甥と海に出る漁師、銛での漁で稼ぐことは難しくなっており、五日間に及ぶ漁の末に水上集落に帰ると「たったこれだけ!」と妊娠中の妻に叱られる。甥は甥で、漁は危険だから学校に通うかすぐ隣の外国人向けリゾートで働く方がよいと勧められる。彼の父はダイナマイト漁で片腕を失っていた。
畏敬の念を忘れない海の生活では、海に潜る時は「水中の世界の人」に許可を求め、加護を祈る。島に上がる時は「ヌヌクの木」(ガジュマル)の気根を束ねて結び、香の代わりに煙草を供えて精霊に上陸の許しを求める。母親は一緒に船で海に出て、炊いた米とゆで卵、煙草を供え、椰子殻の船を流して息子と孫の安全を祈る。
このフィルムを観たからでもないけれど、何一つ自分の手で作らず、生まず、データをメールで送付すると銀行通帳に数字が書き込まれ、何から何まで既製品を購入してその数字を減らしてゆくだけの自分の生活は一体何だろうと思う。
サバ州東岸のあんな感じの島のダイビングリゾートに行ったことがあるが、やはりすぐ近くにはバジャウ人の村があったのを思い出し、後ろめたさを感じる。