ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス、ドラ・ジョビン『アントニオ・カルロス・ジョビン』

 梅田ガーデンシネマにて『アントニオ・カルロス・ジョビン』。本当は大阪アジアン映画祭のために来阪したのだけれど、東京で見逃したこの映画がちょうどかかっていたのでレイトで観てきた。ミニシアターで客は五人ほどという、親密な感じの上映ですごくよかった。何百人も入るような劇場よりは小さいスクリーンで観たい映画だ。
 ガル・コスタから始まって、トム・ジョビン*1の曲がひたすら流れ続ける。伝記映画かと思ったら、結婚写真や息子とのスナップがちらりと映るだけで、関係者のインタビューも一切なく、歌詞の字幕さえなく、ただただ音楽を聴く構成。
 「イパネマの娘」メドレーで様々な歌手のバージョンが流れるのだけれど、中にマルシアまで登場して驚いた。60〜70年代の音源が中心だった(と思う)けれど、フェルナンダ・タカイや小野リサのようにほんの数年前の録音も使われている。ところで、小野リサと共演していたパウロ・ジョビンは息子だと思うけれど、トムと鼻がまったく同じ形だった。
 それにしても、日本で公開されるブラジル映画の半分以上はたぶん音楽映画ではないかと思うのだけど、そういえば中華圏ではこういうタイプの映画はあまり無いのではないか。ミュージカル映画や、昔の楽曲を劇映画で使うというのはあっても、音楽そのものが主役というのは観たことがないように思う。蔡明亮王家衛は音楽ドキュメンタリーを撮ったりする気はないのだろうか。もっとも、昔の中国語のヒット曲は映画の主題歌が多いだろうから、この『アントニオ・カルロス・ジョビン』式につないだら、単に懐かしの映画の名場面集ができてしまうだけのような気もするが…。

原題:A Música Segundo Tom Jobim
英題:The Music According to Antonio Carlos Jobim
製作年:2012年
制作国:ブラジル
時間:84分
言語:ポルトガル語、英語(歌詞)
プロデューサー:Leticia MonteMarcia Pereira dos SantosMauricio Andrade Ramos
監督:ドラ・ジョビン(Dora Jobim)、ネルソン・ペレイラドス・サントスNelson Pereira dos Santos
脚本:Miucha Buarque de HollandaNelson Pereira dos Santos
出演:アントニオ・カルロス・ジョビンAntonio Carlos Jobim)、エリス・ヘジーナ(Elis Regina)、オスカー・ピーターソンOscar Peterson)、エラ・フィッツジェラルドElla Fitzgerald)、フランク・シナトラFrank Sinatra)、小野リサLisa Ono)、ディジー・ガレスピーDizzy Gillespie)、ガル・コスタGal Costa)、ジュディ・ガーランドJudy Garland)、サラ・ヴォーンSarah Vaughan
音楽:Paulo Jobim
編集:Luelane Corrêa

*1:恥ずかしながら彼のフルネームをこの映画で初めて知った…。