古居みずえ『ガーダ パレスチナの詩』(2005)

 ガザのある女性(ガーダ)の結婚から出産、そして第二次インティファーダを経てパレスチナ女性の歴史に関心を深め、48年の占領からの経験を聞き書きして本にまとめようとするまでを追ったドキュメンタリー。

 

 サイクス・ピコ協定バルフォア宣言といった言葉は当然世界史の授業で習ったが、そういった知識を超えて現在のパレスチナの暮らしを示す映像は鮮烈である。パレスチナに生活するということは、ある日突然家がブルドーザーで押しつぶされ、畑は奪われ、実家への道が封鎖されるということなのだ。

 ガーダの親戚の子も、インティファーダに参加してわずか13歳で命を失う。その傷は逃げるところを後ろから撃たれたことを示していた。息子を失って悲嘆にくれる両親の姿から場面は一転、パレスチナ人の抵抗の象徴としての葬儀の模様が映し出される。個人の死が民族の物語に吸収されるさまは、さらに悲しみの深いものだ。こうした経験の後、ガーダはパレスチナの歴史に目覚め、聞き書きを進めるにつれ、祖母の代に逐われたまだ見ぬ故郷への帰属意識を強めてゆく。歴史の中の個人、そして歴史の「物語」ということを考えさせられるものだ。

 また、ガーダやその家族の部屋に入ったカメラが映し出すやりとりは、パレスチナ女性の生活がどんなものかよく知らなかった私にはとても興味深かった。画面に現れる女たちは、思ったよりずっと大きな身振り手振りで生き生きと喋る。しかもかなりはっきりとした話し方で、語尾を曖昧に濁したりはしないようだ。歌あり踊りあり、それぞれの「戦い方」があり、外を銃弾が飛び交っていても笑いながら菓子を作る姿は印象的だった。