龍應台『台湾海峡一九四九』

台湾海峡一九四九

台湾海峡一九四九

 

 龍應台(天野健太郎訳)『台湾海峡一九四九』(白水社、2012)。原書は台湾・天下雑誌より2009年に出版された『大江大海一九四九』で、当時シンガポールでドキュメンタリーのDVDがセットになっている版が平積みされているのを見かけたが、邦訳は文字のみ。
 主にオーラルヒストリーの方法で、日本敗戦から国共内戦の際に故郷を離れざるを得なかった人々の証言から構成されている。てっきり大陸から台湾への外省人の流亡だとばかり思っていたが、そればかりでもなく、日本兵として捕虜収容所で監視員をつとめた台湾人兵士の記録なども収められている。また、日本敗戦後の台湾で国民党軍に志願し、大陸で国共内戦を戦い、解放軍の捕虜となって今度は解放軍兵士として戦うことになったあげく、大陸に五十年も暮らさざるを得なくなったプユマ族の老人からの聞き書きには驚いた。*1 白先勇の『台北人』、張輝誠の『離別賦』といった小説から、大陸から国民党軍に徴発されて台湾に連行された民間人軍夫の人生についてはある程度想像がついたが、逆に台湾から大陸に行ったまま帰れなくなったというケースは考えたことがなかった。
 詩人の瘂弦や管管らのインタビューも収められているが、これは映像があるならそちらを見てみたい。ドキュメンタリービデオの方は日本でもテレビ放送されたりしないのだろうか?(放送されてもテレビの受像機を買わない限り見られないけれど…)

*1:歌手のアーメイこと張惠妹の故郷・泰安村の出身なのだという。