陳芳明『台灣新文學史 上』

More about 台灣新文學史 上

 陳芳明『台灣新文學史』(台北:聯經、2011)、黒い表紙の一冊本と赤と黄色の二冊本の二種類のバージョンが出ている(赤は共産党、黄色は猥褻物、黒は内幕雑誌と1954年からの「文化清潔運動」で禁じられた出版物を示す色)が、電車でも読めるようにと二冊本を買った。しかし毎日少しずつ読んでいたらいつになっても日本統治が終わらないので、思い切って一晩徹夜してなんとか上巻を読み終えた。
 ポストコロニアリズムの視点から描かれた台湾の新文学(文言による旧文学は含まれていない)史で、日本統治期については特に言語別に分けることはせず、内容によって通史の中に位置づけている。当時の代表的な日本語作品は、かなりの部分が中国語に訳されて読めるようになっているようだ。また、上海で活動した劉吶鷗についても取り上げられるのは、台湾人としての側面から彼の文学・映画にわたる活動を捉え直す研究が増えているのだろうか。
 上巻は六〇年代に入ったところまでだが、聶華苓や林海音といった女性作家が、作家としてのみならず編集者としてもかなり重視されている。それから、今迄ずっと潘人木という名前だけ聞いて男性作家だと思っていたのだが、写真を見たら女性だった!
 扱っている作品や作家が相当の数に上るため、作品の本文を引いての解説はほとんどないが、それでも上下で800ページに及んでいる。とりあえず文学史の流れを概観するために読んでいるが、次は作品自体を読んでみないことには始まらないな。