グザヴィエ・ドラン監督・主演『マティアス&マキシム』(Matthias & Maxime、2019)

ケベックのフランス語映画。幼なじみのマティアスとマキシムは、友人の妹に頼まれて代役でキスシーンを演じたことから急に関係がぎこちなくなる。二人は高校時代に一度キスをしていたが、マティアスは覚えていないふり。

マティアスには今では婚約者がおり、マキシムはオーストラリアに二年の予定で旅立とうとしている。出発までの限られた時間、マティアスは何でもないふりをしようと努めるものの、無理がひずみとなって言動の端々に表れ……

一緒に育った二人だが、マティアスはスーツを着て働く前途有望な青年で、マキシムは一人で薬物依存症の母の世話をしつつバーに勤めている。右の頬にある紅い痣と同様、母の存在は常に彼につきまとい、視線にさらされる。

母は生活能力をほぼ喪失しているが、伯母を成年後見人にすると告げられると激昂して、マキシムの心身に虐待を加える。映画に描かれていない時間を想像するとなんともすさまじい。

この伯母が自宅に来た時、マキシムに恋人の有無を尋ね、「伯母さんは?」と聞き返されてこう答える。「最終列車はとっくに去った」。フランス語の慣用句なのかもしれないが、これは使えそうだと思う。

 

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