サモ・ハン・キンポー『七福星』

七福星 [Blu-ray]

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 『七小福』と勘違いして借りて、どうして子供が出てこないんだろう?と冒頭30分くらい悩み続けた。「福星」シリーズの第三作で、前の『 香港発活劇エクスプレス 大福星』(福星高照)と設定が続いているらしい。
 いきなり広島への原爆投下、ベトナム戦争フォークランド紛争とニュース映像が続いて何事かと思うと、「しかしこれらはいずれもこの話とは関係ない」とナレーションが入る人を喰ったオープニング。
 サモハン以下、男ばかり5人がてんやわんやの同居生活を送っているところに、サモハンの恋人と思しき女性刑事(胡慧中)がやってきて皆でパタヤに行くことに。これは前作で5人が活躍したご褒美、という設定らしいが、劇中に言及はない。ところで香港からパタヤってバスで行けるんですね。
 パタヤではコテージに泊まり、同じく香港からやってきた四人娘にちょっかいを出してはじける四人。一方でサモハンは、女性刑事から「捜査のためにあなたを利用したの、本当は愛してないわ」と言われて大ショック。そこに殺し屋集団が現れ、海上での仕事現場を見てしまったためにサモハンと女性刑事も襲撃を受け、急遽予定を繰り上げて帰国することになる。ここで襲いかかってくるのが女装の集団で、しとやかにルームサービスの果物を持って来たかと思うと、いきなりマレーシアで言うところの“巴冷刀”みたいな刃物を抜いて攻撃を始めるのが痛快。これは女性剣士という設定でもよさそうな気はするが、タイといえば「ニューハーフ」というイメージが当時(85年)すでに定着していたのか。
 香港に戻り、パタヤで殺された男が手紙を送ったロザムンド・クワンが次の標的となると判断した女刑事は、サモハンらの家に彼女(と演劇仲間のルームメイト(岑建勳))を避難させる。男5人の家に美女を泊めて大丈夫なのかというと、連中の仕掛けるいたずらはほとんど小学生レベルなので大丈夫らしい。素肌に薄いネグリジェをまとったロザムンドが浴槽に浸かる、といったお色気シーンあり。
 いちおう警察と殺し屋集団の対決、ということになり、警察側ではジャッキー・チェンとユン・ピョウが現れて頑張るのだが、敵がどういう集団で何を狙っているのかはよく分からない。分らなくても何ら差し支えはなく話は進む。敵味方ともにピストルの弾が切れ、格闘になってジャッキーたちが劣勢になったところ、仲間に突き飛ばされて乱闘に参加することになってしまったサモハンが挽回する。
 香港のアクション映画で観ているのは近年の『葉問』くらいで、ドニー・イェン(甄子丹)が悪いわけではないけれど、「どうせこれCG処理でしょ」とちょっと冷めた見方をしていたのだが、この『七福星』ではCG無しでもこれだけできるものかと感心した。前半のコメディー部分が冗長な嫌いはあるが、最後の一連のアクションを見せるための溜めと思えばまあ納得がゆく。
 血闘が終わったところでチーンとエレベーターが開き、事態の収束に現れた警察ご一行とその場にいなかったキャストが延々「有冇搞錯吖?」と言いながら次から次へとぞろぞろ現れる、不条理ギャグのラストには唖然。

原題:夏日福星
英題:My Lucky Stars 2: Twinkle Twinkle Lucky Stars
製作年:1985
制作国:香港
プロデューサー:(レナード・ホー)、曾志偉(エリック・ツァン/Eric Tsang)
監督:洪金寶(サモ・ハン・キンポー/Sammo Hung Kam-Bo)
脚本:黄炳耀(バリー・ウォン/Barry Wong)
出演:洪金寶、成龍ジャッキー・チェン/Jackie Chan)、元彪(ユン・ピョウ)、岑建勳(John Sham)、曾志偉、吳耀漢(リチャード・ン/Richard Ng)、馮淬帆(フォン・ツイファン/Shui-Fan Fung)、苗僑偉(ミウ・キウワイ/Kiu Wai Miu)、胡慧中(シベール・フー/Sibelle Hu)、關之琳(ロザムンド・クワン/Rosamund Kwan)
音楽:黎小田
編集:張耀宗
撮影:黃岳泰(Arthur Wong)、古國華

香港発活劇エクスプレス 大福星 デジタル・リマスター版 [DVD]

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