三隅研次『眠狂四郎 炎情剣』

眠狂四郎 炎情剣 [DVD]

眠狂四郎 炎情剣 [DVD]

 

 DVDで眠狂四郎のシリーズ五作目、『眠狂四郎 炎情剣』。  
 ぬいという女(中村玉緒)と武士が斬り合っているところに行き会ってしまった狂四郎(市川雷蔵)。「これは夫の敵、何でもお望みのものを差し上げます」と助太刀を乞われてつい加勢してしまう。それが発端となり、鳥羽水軍の財宝を着服し証拠隠滅を図る藤堂家の家老・跡部将監との因縁が生まれる。
 狂四郎は「面倒臭いことには関わりたくない」と嘯きつつも、結局あれこれと首を突っ込んでゆく。実に言行不一致で、それは「女は犯し慣れている」という台詞も同じ。基本的に登場する女は、野の花のような清純な少女か、妖艶な悪女に限られる。悪女は性の対象になるがそれ以上にも以下にもならず、清純な少女は決して性の対象にはならない。だから単純な情欲というより、一種懲罰的な、征服欲の発露としてセックスが描かれていると言えるだろうか。
 大変に偽悪的なヒーローだが、市川雷蔵の端正な造形であまり人を食った感じはない。黒一色の着流しも裾が乱れることもないし、浪人髷ではあるがきっちりと整えられてこちらも乱れない。最後にすれ違いざまに女を斬り、振り向きもせず刀をぬぐってすたすたと立ち去るところは圧巻。
 クライマックスの立ち回りは二階の縁側で、高所でのアクションはチャンバラ映画では初めて見たように思う。

英題:Sleepy Eyes of Death: Sword of Fire
制作年:1965年
制作国:日本(大映
時間:83分
言語:日本語
監督:三隅研次
原作:柴田錬三郎
脚色:星川清司
企画:財前定生
出演:市川雷蔵中村玉緒、姿美千子、中原早苗西村晃、島田竜三、水原浩一、小桜純子、安部徹、伊達三郎、上野山功一、守田学
撮影:森田富士郎
編集:菅沼完二
音楽:斎藤一
美術:内藤昭
録音:大角正夫
照明:古谷賢次
スチル:西地正満