マチュー・アマルリック『さすらいの女神(ディーバ)たち』

 DVDでマチュー・アマルリック『さすらいの女神(ディーバ)たち』(公式サイト)。
 ニュー・バーレスクの一座を率いて、アメリカからフランスに凱旋したジョアキム(マチュー・アマルリック)。地方都市の巡業では手応えもなかなかだが、パリ公演は妨害が入って劇場を押さえられない。ジョアキムは単身パリに向かい、旧知の友人たちに助けを借りようとするが、ことごとく失敗する。テレビ業界でトラブルを起こし、ほぼ出入り禁止のような状態になっているようだ。彼の頼みを最初は断ったかつての親友(恋人かもしれない)が、思い直して業界の大物との仲立ちをしてくれるが、かっとなってつい手を出してしまい、今度こそ誰も相手にしてくれなくなる。パリではもともとそれなりに成功していた筈だったのに、仕事も家庭もすべてにおいて見放されてしまったらしい。
 一方でバーレスクダンサーたちは、陽気に興業を続ける。ジョアキムが演出に注文をつけても、「これは私たちのショー」と聞く耳もたない。皆クレイジーホースには間違っても採用されないタイプだが、とにかく景気の良いケレン味たっぷりのショーで盛り上げる。彼女らのステージはジョアキムの視点から映されるので、もっと見たいのにというところで切れてしまうのが残念。風船の中に身体ごと入ってしまうのも楽しい演出だし、ぴょんぴょん跳ねて乳首につけたタッセルを躍らせる屈託のなさも良かった。
 しかし、ダンサーたちもそれぞれに事情があるだろうに、傷心の男を慰めてあげたりして偉いものだと感心する。もっとも、それはお互い様で、持ちつ持たれつという関係なのかもしれないが。

原題:Tournée
英題:On Tour
製作年:2010
制作国:フランス
時間:111分
言語:英語、フランス語
プロデューサー:Yael Fogiel、Laetitia Gonzalez
監督:マチュー・アマルリック(Mathieu Amalric)
脚本:マチュー・アマルリック、Philippe Di Folco、Tom Frank、Marcelo Novais Teles、Raphaëlle Valbrune
出演:マチュー・アマルリック、ミミ・ル・ムー/ミランダ・コルクラシュア(Mimi Le Meaux/Miranda Colclasure)、キトゥン・オン・ザ・キーズ(Kitten on the Keys/Suzanne Ramsey)、ダーティ・マティーニ(Dirty Martini)、ジュリー・アトラス・ミュズ(Julie Atlas Muz)、イーヴィ・ラヴェル(Evie Lovelle/Angela de Lorenzo)、ロッキー・ルーレット(Roky Roulette/Alexander Craven)
編集:Annette Dutertre
撮影:Christophe Beaucarne