パク・チャンギョン『浄土アニャン』

 アジアフォーカス・福岡国際映画祭にて。韓国のアニャン(安養)市の歴史をいくつかのテーマに絞り、取材する過程を俳優が再現した(フェイク)ドキュメンタリー。
 一つは高麗時代の安養寺の遺跡発掘に関するパート。現在確認されているのは、本来の安養寺のごく一部にすぎないとみて発掘調査が行われる。そこには幾つもの時代の層が堆積しており、安養寺遺構に重なるようにして建設された工場も、ル・コルビュジエの弟子にあたる韓国人建築家が設計した近代の歴史的建造物。設計図があるので移築も可能とはいうものの、軽々に取り壊すわけにもゆかない。
 一方、1988年には近くのグリーンヒルという縫製工場で出火、22人の女工が焼死するといういたましい事件があった。ソウル五輪を控えて労働運動が高まりを見せる中、宿舎は夜間は外からシャッターを下ろされ、急病人が出ても医者に診せることすらかなわなかったという。閉じ込められた状態で出火に気づいた女工たちは、運良く便所の窓から逃れられた数名を除き、みな煙に巻かれて命を落としたのだった。撮影クルーは安養市内の共同墓地を訪ね、彼女らの墓所の在処を問うが、見つけられずに終わる。最後にインタビューを受けた女性作家はこう答える。他郷で死んだ女は当時は不吉と見なされていたため、故郷に亡骸が引き取られることはまず無かっただろう。彼女らの遺体も多くは安養で荼毘に付され、遺灰は市内の川に撒かれたのではないか――
 こうして、88年の火災の犠牲者と、2000年に同じく安養市内で起きた水害の犠牲者が川を通じてつながる。鎮魂と災害を防ぐことを祈っての祭祀が行われることになり、火を点けられた舟が川に流される。
 映画祭の公式カタログに載った監督メッセージは、次のような言葉で結ばれている。

韓国でジガ・ヴェルトフの「カメラを持った男」のような映画を構想するとしたら、“都市シンフォニー”は、都市本来のイメージである有機的かつ躍動的なモンタージュとは異なるはずだ。それ不協和音と自己矛盾をさらけ出し、同時にとても祭儀的な音楽=映画になるべきではないだろうか。そこで、本作の英語のキャッチコピーを“Ritualistic Symphony of a City”とした。死者とは忘却を通して断絶するより、祭儀を通して断絶する方がよい。韓国人がすべき最も重要な公共的行為は、若くして無念の死を遂げた魂を慰めることだと私は思う。

 グリーンヒル火災の後、22人の犠牲者の遺影を一枚の絵として描いた作品が最後に映し出される。京畿道美術館に展示されているというその大きな絵には、地方から出稼ぎに来た若い女性たちが明るい色彩のチョゴリを身につけた姿が描かれている。

原題:다시 태어나고 싶어요, 안양에/Anyang, Paradise City
制作年:2010
制作国:韓国
プロデューサー:キム・ミンギョン
監督:パク・チャンギョン(박찬경)
脚本:パク・チャンギョン、キム・ヨングル
出演:ハン・イェリ(한예리)(Staff 1)、パク・ミニョン(박민영)(Staff 2)、キム・ジョング(김종구)、オム・テグ
撮影:チ・ユンジョン、チェ・ウォンジュン、パク・チャンギョン
音楽:カン・ミンソク
録音:ソン・ヨンホ
編集:ユ・ソンヨプ