ダーレン・アロノフスキー『マザー!』(mother!、2017)

ジェニファー・ローレンスと作家の夫ハビエル・バルデムというかなり年齢差のある夫婦。郊外の一軒家に暮らしているところに、見知らぬ男が現れて宿を請う。そして翌日から彼の家族が次々に現れ……

あーデリダの歓待か、移民の寓話だなと思いながら見ていたが、そうではなくて〈ミューズ〉の目から見た芸術家の話だった。建て替えではなく、苦心してDIYに励みリノベーションしつつある家は、完成することなく土足で踏み荒らされ、日常は戦場へと変じる。崇拝者たちにとって〈ミューズ〉は作品に奉仕する女奴隷で、産み出された作品は読者の血となり肉となる。そして観客もまた、作品の享受を通じてミューズを消費している。